現音 Music of Our Time 2024
ペガサス・コンサートvol. VI
The Microcosm of The Unaccompanied Contrabass
無伴奏コントラバスの小宇宙
プログラム
北爪道夫 : 重力の舞(2024)※山本昌史委嘱作品・世界初演
ダニエル・ダダモ : Ombres portées(2017)※日本初演
ブライアン・ファーニホウ : Trittico per G.S.(1989)
一柳慧 : 空間の生成(1985)
平義久 : Convergence II(1976)
ヤニス・クセナキス : Theraps(1975-76)
ジェイコブ・ドラックマン : Valentine(1969)
チケット
座席券 ¥3,000
配信視聴券 ¥1,500
GEN-ON Music of Our Time 2024
Pegasus Concert vol. VI
Masashi Yamamoto 『The Microcosm of The Unaccompanied Contrabass』
Dec 5th 2024(thu) 19:00 JST (10:00 UTC)
Tokyo Opera City Recital Hall
Seat 3000JPY / Streaming 1500JPY
-Program-
Jacob Druckman : Valentine(1969)
Iannis Xenakis : Theraps(1976)
Yoshihisa Taira : Convergence II(1976)
Toshi Ichiyanagi : Generation of Space(1985)
Brian Ferneyhough : Trittico per G.S.(1989)
Daniel D’Adamo : Ombres portées(2017)※Japan Premiere
Michio Kitazume : New Work(2024)※World Premiere
Streaming Ticket
https://jscm.official.ec
問合せ/Infomation
mail@masashiyamamoto.net
優れた演奏技能と表現力を有し、かつ、企画のコンセプトとプログラミングの創造性、独自性の豊かさ、そして、一夜の演奏会としてのまとまりを十分に備えていることを選考基準とする《ペガサス・コンサート・シリーズ》。
コントラバス奏者・山本昌史は、独創的なアプローチで現代作品をとらえ、確かな演奏技術で独奏コントラバスの新境地を開拓してきた。
本公演は、さまざまな視点からコントラバスという楽器の特性を引き出し、緻密な描写を追求した傑作、コントラバスの大きな胴体や長い弦を生かした独特な奏法、奇想天外でありながら芸術的にも優れた知る人ぞ知る名作を取り揃える。コントラバス現代作品の中でもとくに難曲と言われる作品をはじめ、圧倒的な存在感を放つこれほどのプログラムは他に類例をみない。
深い洞察力で多層的な表現を必要とする『Trittico per G.S.』(B.ファーニホウ)、内なる衝動と入念に向き合う『Convergence Ⅱ』(平義久)、いずれも日本では演奏されることがほとんどなく、貴重な機会となるだろう。
また、演劇的要素をもつ『Valentine』(J.ドラックマン)、伝統的な書法により楽器に無理なく書かれた『空間の生成』(一柳慧)、完全に楽譜通りに演奏することは不可能とも言われる『Theraps』(I.クセナキス)、近年作曲された『Ombres portees』(D.ダダモ)はコントラバスのあらゆる特殊奏法が盛り込まれ、この楽器ならではの多彩な音を聞かせる。
さらに、本公演にて、いよいよ世界初演となる北爪道夫作品。このたび明らかとなったそのタイトル『重力の舞』とは、果たしてどんな作品なのか。新たな名作誕生に期待が高まる。
いずれも、コントラバスでしか創り出せない小宇宙を生み出す作品ばかりである。そして、どれほどの傑作であろうとも、作品の醍醐味を最大化する演奏者の存在は欠かせない。
際限なく広がる創造の宇宙を、旺盛な好奇心でひたむきに探求し、唯一無二の革新的な活動を続けるコントラバス奏者・山本昌史による《無伴奏コントラバスの小宇宙》、創意に富んだ作品の魅力を存分に表現し、聞き応えのあるコンサートとなるに違いない。
かつてないコントラバスソロを、是非、ご体感ください!!
ジェイコブ・ドラックマン : Valentine(1969)
1969年に初演されて以来、世界中で最も演奏回数が多いと思われる独奏コントラバスのための現代作品。それまでの「ルール」と「伝統」を破り、作品に演劇的な要素を加えるだけでなく、楽譜を「再発明」した。
五線譜の下にはさらに2本の線が記され、上には声楽用の五線譜が追加されている。音符の符頭は、白、黒、それぞれ、円形、三角形、四角形、×印など、全て異なる奏法を意味する。 拍子やテンポが設定される代わりに、5秒間隔でおおよその経過時間が表示されている。演奏者は、このあまりにも多すぎる楽譜上の情報を読み取り、表現することを要求される。
ジェイコブ・ドラックマン(1928-1996)
アメリカ・コネチカット州に生まれ、15歳で作曲を始める。ジュリアード音楽院、パリのエコールノルマル音楽院で学んだ後、ジュリアード音楽院で教鞭をとった。電子音楽やオーケストラ、小規模アンサンブルのための多くの作品に取り組み、1972年にピューリッツァー賞を受賞。1982〜85年までニューヨークフィルのコンポーザーインレジデンスを務めた。
ヤニス・クセナキス : Theraps(1975-76)
微分音程がぎっしり書き込まれた音符が、五線譜上に、隙間もないくらいびっしりと、5オクターブを上下し、とても一人では演奏できそうにない重音のグリッサンド、本当に「楽譜通り」に演奏するのは不可能ではないかと思える作品。
「Crushing the string」の指示から始まり、全体は大まかに、複雑な連符が連続する単旋律、重音のナチュラルハーモニクス、重音のグリッサンドという三つの部分から成る。確率的原理に関連した「ブラウン運動」理論に基づいている。
ヤニス・クセナキス(1922-2001)
ルーマニア・ブライラに生まれる。10歳の時ギリシャへ向かい、音楽と出会う。アテネ工科大学にて建築と数学を学び、第2次世界大戦中にギリシャ国内で反ナチス・ドイツのレジスタンス運動に加わる。1948年より建築家ル・コルビュジェの弟子となる。建築家として才能を発揮する傍ら、パリ音楽院にてオリヴィエ・メシアンらに作曲を学ぶ。メシアンからの進言により、数学の論理を応用した作曲方法で斬新な作品を生み出した。
平義久 : Convergence II(1976)
特殊な調弦を用い、開放弦の響きを生かした面白い音響をもつ作品。随所に特殊奏法も見られるが、静寂と繊細さが際立つ。左手の押弦点から下駒までを鳴らす(通常の演奏)と同時に、押弦点から上駒まで(指板上)を鳴らし、独特の和音を奏でる奏法は、この作品が起源であろう。
西洋のリズムとは異なる不規則な間や和歌の韻律を思わせる音使いに、日本の伝統音楽の影響が感じられる。
平義久(1937-2005)
東京に生まれ、東京藝術大学を卒業後渡仏し、パリ音楽院でアンリ・デュティユー、アンドレ・ジョリヴェ、オリヴィエ・メシアンらに作曲を学ぶ。フランス各地の音楽祭から委嘱を受け、ヨーロッパ内で演奏機会が増えた後、1974年に代表作「クロモフォニー」が日本初演され、日本に広く紹介されることとなった。パリを活動拠点に、ヨーロッパ文化の中に身を置くことで逆に日本文化を再認識し、独特の作風を生み出した。
一柳慧 : 空間の生成(1985)
重音やハーモニクスを効果的に使用した一聴すると不穏にも感じられる叙情的な導入部から始まる。コントラバスの長い弦長を生かしたグリッサンドを多用しながら音の密度は徐々に濃くなっていき、動きのある中間部に至る。委嘱初演者である溝入氏に作曲家の意図や作品の背景などを伺ったところ、8分音符のフレーズが連続するこの中間部は、一見するとミニマルミュージックのようであるが、無機質に弾いてはならないと一柳氏は言っていたそうである。クライマックスの緊張が解けたあとには、深い余韻とともに静謐な空間が広がる。
一柳慧(1933-2022)
神戸市に生まれる。若くして渡米し、ジョン・ケージらと実験的な音楽活動を展開した。欧米の前衛音楽を日本に広く紹介し、様々な分野に強い刺激を与える。偶然性や不確定性の音楽、ミニマル・ミュージック、空間性を生かした音楽など、長年に渡り作曲家、演奏家として意欲的に活動し、多くの功績を残した。
ブライアン・ファーニホウ : Trittico per G.S.(1989)
独奏曲であるにもかかわらず楽譜は2〜3段に分かれ、ファーニホウの他の作品のように、全ての音素材が複雑に絡み合っている。段ごとに異なるリズムが極度に入り組み、それぞれの音符への指示は微細にわたり、情報量は尋常でない。
ブライアン・ファーニホウ(1943-)
イギリス・コヴェントリーに生まれる。バーミンガム音楽院を経て、英国王立音楽院で作曲をレノックス・バークリーとハンプリー・サールに師事した。その後アムステルダムにてトン・デ・レーウ、バーゼルにてクラウス・フーバーに作曲を学び、様々な作曲賞を受賞。フライブルク音大、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教え、現在はスタンフォード大学で教鞭をとっている。
ダニエル・ダダモ : Ombres portées(2017)※日本初演
5つの楽章から構成されている。コントラバス特有の奏法である両手でのハーモニックスピッチカートが特徴的に響くI、複雑に入り組んだリズムだがどこかジャズ的な空気を持つII、長い弦長を生かしたマルチフォニックが響き渡るIII、打楽器的、ディストーションのようなノイズから、超弱音まで色彩豊かなIV、嵐のようにフィナーレに向かうV、どの楽章もそれぞれに個性が際立ち、最初から最後まで見た目も音も楽しめる作品となっている。
ダニエル・ダダモ(1966-)
ブエノスアイレスに生まれ、そこで音楽家としての訓練を始める。1992年に渡仏、リヨン国立高等音楽院でフィリップ・マヌリに作曲を師事し、IRCAMにてトリスタン・ミュライユとブライアン・ファーニホウに師事した。大編成アンサンブルやモノドラマ、室内オペラなど、作品は北米、南米、アジア、ヨーロッパで演奏され、フランス国内の様々な音楽祭から委嘱を受けている。
北爪道夫 : 重力の舞(2024)※山本昌史委嘱作品・世界初演
北爪道夫(1948-)
東京藝大大学院修了。1977〜85年「アンサンブル・ヴァン・ドリアン」の企画作曲指揮で内外の現代作品を紹介、グループで中島健蔵賞受賞。1979年文化庁派遣で渡仏以降、多様な音楽活動を続け、2度の尾高賞、「サントリー芸術財団作曲家の個展」等の成果で中島健蔵賞を再度受賞。またユネスコ作曲家審議会グランプリ、芸術祭大賞、吹奏楽アカデミー賞、クラリネット協会賞等。創作のヒントはまさに森羅万象から得ている。愛知県立芸大名誉教授。