撮影:日置真光
提供:静岡音楽館AOI
第21回静岡音楽館AOIコンサート企画募集事業
Masashi Yamamoto Contrabass Solo
山本昌史コントラバス・ソロ
The space of contemporary pieces for solo contrabass
独奏コントラバスのための現代作品が誘う世界
2022.9.22 19:00 start (18:15 open)
2022年9月22日 19時開演(18:15開場)
静岡音楽館AOI (8階ホール)
全席自由¥2,000
22歳以下¥1,000
主催: 山本昌史 静岡音楽館AOI
後援:(一社)日本作曲家協議会
東京藝術大学同声会
(特非)日本現代音楽協会
コントラバスの音楽、聞いたことありますか?
コントラバスは弦楽器の中で一番大きな楽器で太くて低い音が特徴だが、実はおよそ4オクターブの音域を持ち、優しく甘やかな音を出すこともできる。ソロ演奏では、暖かくて渋い音色を生かした曲や、長い指板を高速で駆け回る超絶技巧作品もあり、見た目の大きさとも相まって、とても迫力ある演奏が楽しめる楽器なのだ。
稀有なプログラムを最高の音響で
コントラバスの独奏をAOIほどの素晴らしいホールで聴ける機会はなかなか無い。この機会に、最高の音響で独特の深い響きを感じてほしい。さらに注目すべきはプログラムである。すべてがコントラバス独奏のために作られた現代作品。数種類のエフェクターを操作したり、まるで打楽器のように扱ったり……数々の〝飛び道具〟も用意されている。
また、本公演では2作品の初演を予定している。ジュネーブ国際音楽コンクール優勝の高木日向子氏による『Lost in_____ IV』。現代音楽の最先端で強烈な個性を放つフランスの鬼才、ピエール・ジョドロフスキ氏による『TOUCH』。この公演で、たった一度しかない世界初演の瞬間をどうぞお聞き逃しなく。
現代奏法の巧妙
山本昌史は、現代作品に意欲的な取り組みをしている数少ないコントラバス奏者である。作品に対する深い理解のもと、鮮やかな演奏で多くの聴衆を魅了してきた。多彩な音色を紡ぎ出す山本昌史が誘う世界——コントラバスの可能性を信じた作曲家達が創造した音楽の世界——是非、会場で体感してください。
コントラバスの魅力が最大限に発揮される
現代の名作たち
ルチアーノ・ベリオ: セクエンツァXIV S.スコダニッビオによるコントラバス版 (2004)
セクエンツァXIVは、もともと2002年にチェロのために書かれた作品だが、イタリアのコントラバス奏者、S.スコダニッビオがコントラバス用に編曲した。
冒頭と中間部はフィンガーハーモニクス奏法(親指で 弦に軽く触れ、同じ手の他の指で弦を弾く)で演奏される。コントラバスの特徴である弦長の長さ、楽器の大きさを存分に生かしたこの奏法により、ハープのような音響効果が得られ、原曲には出すことのできない独特な雰囲気を醸し出すことに成功している。
藤倉大:Bis (2018)
特殊な調弦を用い、全編にわたってコントラバスをギターのようにかき鳴らす。 弦楽器は通常、「駒から押弦点」を発音させて音を出すが、コントラバスは弦長が長いため、「押弦点から上駒」すなわち、指板上を発音させても大きな音量が出る。この「駒から押弦点」「押弦点から上駒」の音程的、音響的な差を上手く利用した、コントラバスの新たな奏法を確立させた作品といえるであろう。
ジェイコブ・ドラックマン:ヴァレンタイン (1969)
1969年に初演されて以来、世界中で最も演奏回数が多いと思われる独奏コントラバスのための現代作品。演奏者は弓、両方の手、ティンパニのスティックで楽器胴体、駒、弦を叩き、多彩なビートと音色が生み出される。セリフを読んだり、絶叫したり、また、歌による対位法もある。 「ヴァレンタインは強烈な勢いで始まり、陶酔状態に向かって進む。演奏者は、ほぼマルキ・ド・ サドのような集中力で、楽器を攻撃しなくてはならない。」(スコア冒頭より)
高木日向子:Lost in_____Vl(委嘱新作・2022) ※世界初演
2019年にジュネーブ国際音楽コンクール作曲部門で優勝した注目の作曲家。Lost in______は独奏曲のシリーズで、今までにオーボエ、ヴァイオリン、ホルンなどのために作曲された。その第6作目となる。
湯浅譲二:トリプリシティ (1970)
事前に録音された2台のコントラバスによる演奏を聴きながら、一人がライブで演奏するという、いわば独り三重奏である。銅鑼を弓で弾く音で幕を開け、楽器を手のひらで叩いたり、マリンバのマレットを使用したり、打楽器アンサンブルかのように曲が進む。中程の2~3分は、図形で描かれた音素材を元に即興演奏をする。
池辺晋一郎:モノヴァランスV (1975)
変調(エフェクト)を伴った独奏曲。演奏した音が5種類の変調を伴ってスピーカーから出される。フェイズシフター、フリケンシーシフター、ファズ、エコーマシン、ワウの5種類。技術者がエフェクターを操作するようにとの指示がある。初演から40年以上経ち、音響機材は格段に進歩した。今回は演奏者自身が演奏しながら、同時に技術者としてエフェクターの操作も行う。
ピエール・ジョドロフスキ:TOUCH(委嘱新作・2022) ※世界初演
フランスの作曲家P.ジョドロフスキは映像、照明などのマルチメディアとのコラボや実験音楽で最先端を走る鬼才。2021年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールの課題曲の委嘱も受け、多方面で活躍している。この度、独奏の限界をテーマに、一人で全て制御可能なコントラバスとエレクトロニクスの新作を委嘱した。「ジェスチャーアプローチ」と名付けられた右手でのPCの操作も演奏の一部とみなされ、演技的要素が重要視される。照明の細かい演出指定もある大作となっている。
サントリー芸術財団 佐治敬三賞
2022年下半期推薦コンサートに選出されました
静岡音楽館AOIコンサート企画募集事業とは?
静岡音楽館AOIにて、一年に一度募集が行われる。AOIが主催する事業の一つとして、静岡ゆかりの音楽家からコンサートの企画を募集し、採択者とAOIがいっしょにコンサートを創っていく。審査員長は芸術監督の野平一郎氏、他に企画評議委員が審査にあたる。2021年募集の第21回に採択されたのは、本企画のみであった。
静岡音楽館AOI
静岡駅北口に降り立ち、左を向くとそびえ立つビルディング、静岡中央郵便局。AOIホールはこのビルの8、9階に位置し、客席618席のシューボックスタイプ、残響は満席時2秒と弦楽器には最高の音響効果を誇る。
先日リハーサルで演奏した折、普段との音の違いに驚いた。自分自身も震えたが、コントラバスはいつも以上に戦慄き、確かな響きに興奮した。全く違う楽器のように聞こえると言ったら言い過ぎかもしれないが、低音はどこまでも広がり、高音の繊細さは言葉に出来ないほどであった。是非この素晴らしいホールでコントラバスの真の音を体感してほしい。
革新的なアイデアで未踏の領域を開拓した作曲家や
現代を生きる作曲家たちが
コントラバスの可能性を信じて創造した世界
コントラバスにしか創り出せない音楽の世界へ
委嘱作曲家 ピエール・ジョドロフスキ氏
数年前のある日、いつものように独奏コントラバスのための現代作品を探してネット上をリサーチしていると、一人の作曲家のウェブサイトにたどり着いた。名前はピエール・ジョドロフスキ。
フランスのコントラバス奏者J.P.ロベールのCDに収録されている、1995年に作曲されたコントラバスとエレクトロニクスのための『VOLA』という作品について調べていたところ、たどり着いたのである。
傍らにエレキベースが置いてあるプロフィール写真が印象的たった。ピアノとサウンドトラックの作品を何曲か試聴したが、今まで体験してきた音楽に通じるものを随所に感じ、聞き入ってしまった。
なんと言っても彼のいちばんの特徴はエレクトロニクス、照明、映像などのマルチメディアとの融合である。
今回初演される『TOUCH』は、劇場的パフォーマンスから始まり、徐々に音楽的、演奏を伴うパフォーマンスとなっていく。それも、全てエレクトロニクスとともに変化していく。演奏者自身がエレクトロニクスを操作し、その動作さえ演奏とみなされ、楽譜に細かく指定があるのだ。最終的に演奏者はエレクトロニクスと一体化する。果たしてこれは独奏なのか、そもそもこれは演奏なのか…是非その目で確かめていただきたい。
委嘱作曲家 高木日向子氏
「呼吸を感じられる音楽」をテーマにした楽曲を数多く発表し、作品は、スイス・ロマンド管弦楽団、Lemanic modern ensemble、Musique des lumières、大阪音楽大学管弦楽団(指揮 井上道義)等の団体や著名な演奏家に演奏されている。
ジュネーブ国際音楽コンクール作曲部門第1位の作品"L’instant" for oboe & ensemble
を聴き、是非コントラバスの独奏曲を作曲していただきたいと思い、お願いしました。
今回演奏する”Lost in_____” は独奏曲のシリーズで、今回初演するのは第6作目。
今まで弾いてきた曲の中で一番高い人工ハーモニクスがでてきます。
コントラバスの可能性が散りばめられた無伴奏曲。どうぞ会場でお聴きください。